更新日:2014年03月14日
<陳謝>
前回から筆を置き過ぎてしまいました、ごめんなさい・・・。
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エコミュージアムセンターをひととおり見終えたあと、
なんとなく呼ばれるように施設の裏手にある遊歩道へ。
それはどうやら阿寒湖に続く道のようだった。
なんの木かわからないがマツの一種と思われる木立の樹幹には、
コケやら地衣やらがところどころについていて、
それらを簡単にチェックしながら道なりに進んでいく。
しばらく行くと、ある地点で森が終わり、辺りが急に明るくなった。
どうやら阿寒湖に出たようだ。
私はそれまでの森の中にはなかった異様な臭いを察知した。
なんだろう、このモワッと生暖かくて卵が腐ったような臭いは。
臭いの正体は目の前の看板が示すところによると「ボッケ」と呼ばれる泥火山だった。
ボッケとはアイヌ語で「煮え立つ」という意味の言葉であるという。
柵の向こうを見ると地底から上がってくる硫黄ガスや水蒸気に押されて泥がはじけ、
地面にポコッポコッとあぶくが立つ。なんとなく不気味。さながら「地獄鍋」のようだ・・・。
なぜこのようなものが阿寒湖のほとりにあるのかといえば、
阿寒湖は火山噴火によってできたカルデラ湖であるからなのだった。
いまも湖の周囲にある「阿寒」と名のつく3つの山、
雄阿寒岳(おあかんだけ)、阿寒富士、雌阿寒岳(めあかんだけ)はいずれも火山で、
さらに雌阿寒岳については、いまも活火山として活動中という。
つまり「阿寒」と呼ばれる地域一帯は火山エリアであったのだ。恥ずかしながら知らなかった・・・。
それこそ湖の南岸では温泉がわき出、街一帯が温泉街となっているのはそういうわけなのである。
さて、阿寒湖といえばマリモだ。
湖畔まで行けば普通に見られるものだと思っていたが、
これまた無知ゆえの勝手な思い込みであった。
阿寒湖の中でも、マリモに合う環境はきわめて限られており、
さらに生育地は湖畔ではなく、浅めの湖底とのこと。
…というのを後日、マリモWeb(後述)を読んで知ったので、
この時の私は湖畔をしばらく真剣に探し回ってしまった。
マリモはもともと「シオグサ」という緑藻類の仲間が集まって時間をかけて球状になったもの。
野球ボール大になるのに150~200年近くかかるそうだ。
この看板が言うとおり、丸いだけがマリモじゃない。
丸くなくたって、これから丸くなる可能性もある。
採ったらアカン!ゼッタイ!なのだ。
なお、マリモについては「阿寒湖のマリモ公式ホームページ マリモWeb」の情報が非常に詳しい。
ご興味がある方は、ぜひサイトを読んでみてください。
マリモを探していたら湖畔を臨むベストビューに陣取っているハイゴケ群落を発見。
湖ごしにコケとはなんともいい眺め。しばし写真撮影に熱中する。
そしてふと、触り心地を確かめようとハイゴケに手を当ててみたら驚いた。
コケなのに暖かく、辺りはそこそこ風もあるというのに実にしっとりとした優しい手触り。
ためしにコケの生えていない地面も触ってみるが、やはり暖かい。
そうか。これは、そばにボッケがあるおかげで
地熱がコケに伝わりこんなに暖かいにちがいない。
余談だが、ハイゴケは、学名(ラテン語)を「Hypnum plumaeforme(ヒプヌム プルマエフォルメ)」といい、
語源は、ギリシア神話の眠りの神ヒュプノス(Hypnos)からきているという。
直立せず地面に寝るように這って生える「這い苔」だからそのような名前がついたのかわからないが、
知り合いのコケ研究者の先生は昔、ハイゴケを長年研究されていた大御所先生が退官されるときに、
このヒュプノスにあやかってハイゴケを詰めた枕をその方にプレゼントしたのだとか。
できることならば、ほんわか暖かいこのハイゴケを
このまま宿に持ち帰って枕に詰め、私も今夜一緒に眠りたいぐらいだ。
なお、旅を終えて改めて調べてみると、
このボッケ一帯の地面は冬でも雪が積もらないのだという。
湖畔からの水蒸気とボッケからの地熱、冬も雪に埋もれず、
まさしくここはハイゴケにとってパラダイスなのだろう。
夕食時、仕事を終えた新井さんと再び合流し、
新井さん行きつけのアイヌコタン(アイヌ集落)に飲み屋さんへ。
自称アイドル好きのマスターはNHK「あまちゃん」の大ファンでもあり、
その時はちょうど流行り病のように蔓延していた「あまロス」に陥っていたところだった。
かくいう私も毎朝欠かさず「あまちゃん」を見ていたクチで、
マスターほど肩を落としていないが、それなりのあまロスだ。
そんなわけで自然とマスターとはあまちゃん話で盛り上がる。
その間、「あまちゃん」をほとんど見ていなかった新井さんは仲間外れ状態に・・・(新井さんごめんなさい)。
マスターは一人で切り盛りし、よくしゃべっているにもかかわらず、
ほどなくして次々と料理がテーブルに並べられた。
そしてなんと、なんと、出ました!
秋の味覚の王様「マツタケ」を使った
松茸ご飯&松茸のお吸い物が!
このマツタケ、実は新井さんが数日前に採ってマスターに差し入れたものだという。
マツタケといえば普通はアカマツのそばに生えることが知られるが、
なんと北海道ではアカエゾマツ、(クロ)エゾマツ、トドマツ、ハイマツなどからも生えてくるのだそうだ。
そういえば私って前回マツタケを食べたのいつだっただろう・・・
頭の中をどうこねくりまわしても思い出せない。
普段からマツタケ様とはものすごく縁遠い人生を送ってきただけに、
ひょいと普通にマスターから差し出されたこの松茸料理には軽いカルチャーショックを受けた。
横の席では「明日行く森はいいですよ~。コケもキノコもいっぱいなんだから」と新井さんがお酒を飲みながらしきりに言う。
マツタケで腹を膨らませ、コケの森に胸を膨らませる。
なんという至福の時間だろう。
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新井文彦さんの最新情報です。
◆東京 2014.3.21(金)
お台場カルチャーカルチャーで行われる「キノコナイト vol.4」に新井さんが出演されます。現在チケット発売中です。
◆大阪 2014.4.3(木)から写真展を開催されます。
・場所:近鉄百貨店上本町店 9階催事場(近鉄大阪線・奈良線 大阪上本町駅下車)
・期間:2014年4月3日(木)~ 4月9日(水)10時 ~ 19時(最終日17時まで)
・問い合わせ:近鉄百貨店上本町店
※5日(土)、6日(日)のみ、全日会場に滞在して、11時、13時、15時、17時には写真解説あり(予定)。
※展示するオリジナルプリント(額装)は販売あり 。
藤井 久子